M3からしばらく経ったので、新譜として出した「I, MANUSYA EP」の振り返りとか解説とか書こうと思います。
↑配信版出してます
◎窮余の策 以前
別記事で書いてましたが、今回のM3では本来この作品をメインとして出す予定はなく、
作業の気晴らしに1曲ゴアトランスを作ってたらたまたまスラスラと作業が進んだので、
予定してたメインのY2Kアルバム「『E』と嘲る」が完成して時間が余ってたら手焼き+自家印刷で5枚くらい作って売ればいいかな~~~くらいの気持ちで用意していたものでした。
しかしそっちの進捗があまりにも悪く、プレビュー版として出すにも「完成としていたはず」の曲を聴きなおしたらちょっと……出せるクオリティにないな、という状況で。
結果として「『E』と嘲る」は今回に合わせたリリースを見送ることになり、急遽この作品がメインに繰り上がってくることになりました。
※ここで言うことじゃないけど、今年秋シーズンの多忙が確定してしまってるので「『E』と嘲る」のリリース今年中は無理そうです、ごめん というわけでこれをメインにするのを決めたのが
3月中旬。
その状況で出せそうな曲は表題曲1曲のみ。……本当に大丈夫なのか?
◎暴挙 まあ出て振り返ってるから大丈夫だったんですが、かといって相当ギリギリだったのは事実で。
元々「『E』と嘲る」はジュエルケース+帯のちゃんとした想定でやろうとしてた都合、この時期なら自家印刷じゃなくても行けるか?と思ったので、ケースこそ5mm厚ですがちゃんと印刷所に発注したものを出せました。
ただ印刷周りはともかく音回りの進捗が結構危なくて、
・先述した通りメインに繰り上がった時点で1曲しか完成曲がない
・ハードMIDI音源時代のリメイクでお茶を濁してみたがリメイク対象にできる曲自体1曲しかない
・別案件用に途中まで作ってた曲がたまたまゴアっぽくなったのでアレンジを変えてスライド
結構プライドのないことやって収録曲数を稼ごうとしてますが、ここまでやっても3曲。聴く側としてはやや食い足りません。EPっていうからには5曲くらい約30分は欲しいよなあ。
この状況で4月を迎えてしまいました。
折り悪く、世界情勢(細かいことは触れません)の影響で石油製品が高騰し始めている状態。
「これあまりギリギリに入稿すると印刷費用が当初想定より上がってしまうのでは?」
当時リアル諸事情で持ち金が少なかったので、私はそのタイミングで
プロジェクトファイルすら存在しない2曲(名前も勘)を含めた5曲入りのEPとして各種デザインを入稿する、という暴挙に出ることとなります。
ちなみにその判断が功を奏したのか、値段と納期の関係は私はそこまで影響を受けませんでした。やったね。
◎尻ぬぐい さて、入稿後は名前だけ先に決めた2曲を作っていくことになったのですが、想像以上に筆が進まない。
片方はネオゴアトランスかつJ-POPみたいな歌モノ、という
こういう急ぎのときに絶対想定してはいけない無茶振りだったのでそれは仕方ないとして、もう片方のラストトラックも尺がなんか変だし作品全体のアウトロとしてはなんか説得力がない。
うんうん唸っても何も出てこないし、試しに丸ごと作り直そうとして見たけどあまりいいアイデアが出ず元に戻して、それでも何も出ず仕方ないので変なメロディでお茶を濁す、みたいなことになってしまいました。
◎結果 そういう大分ひどい状況でなんとかCDを焼いてM3に持って行ったような状態で、事前告知もロクにできた状態ではなかったので、正直「いつも買ってくれる知り合いたちが計5部くらい買ってくれればいいや……」くらいの気持ちでいたのですが、
実際に開会してみると、意外にも初めてエンカウントした知り合いとか多分本当にXFDだけ見て来てくれた方とかにいっぱい手に取っていただけて、用意してた在庫がほぼなくなるという予想外の結果になりました。
もちろん純粋に嬉しさはありますが、特に完全初見っぽい方々にはここまで色々とアラが出てしまった作品をゴアトランスとのファーストコンタクトにしてしまった可能性があるのはちょっと罪悪感があるかも……
もし今作きっかけにゴアトランスに強く興味を持った方がいるなら、続けて
Global Sectの大型コンピとか
Celestial Intelligence大先生の名作とかを聴くことをお勧めします。現代ネオゴアトランスのだいたいがわかります。
同人音楽やそれに近い界隈だとマシンライブ勢の
Equinox Lily氏が極上のゴアトランス作っていらっしゃるのと、
PINK PONG名義でゼロ年代音ゲーで精力的に活動していたZETA氏が当時品のゴアトランストラックを再リリースしてらしたりします。
◎各曲の解説とか・Tr.01 I, MANUSYA
上記していた通り、企画段階で唯一完成系が存在していたタイトルトラック。
元々は「『E』と嘲る」の収録曲を作ってる最中にSylenth1のファクトリープリセットを頭から聴いていってて、その中で「LD Classic Trance」という音色があんまりにもゴアすぎないか?ということでメモっておいて、作業の合間で気晴らしに原型を作っていた曲です。
曲自体は「Dwelled On」「sacrifice(の短縮版)」に続く私の手癖満載のオレ流ネオゴアトランス。
タイトルの「I, MANUSYA」はインド神話的な言い回しのチャンポンで「私はヒト」という意味ですが、これはゼロレンジャーというストーリーテリング型STGの印象的なスクリプトから引用してます。
まあそのゲーム作中での露骨なCAVEディスが酷くて二度とやるかって思ったけど。・Tr.02 SYZYGY feat. 無来
タイトルだけ先に決めちゃった曲の片割れです。
実験として「(サイケに踏み込まない程度に)ゴアトランスの歌モノ曲」をやってみたかったのでやりました。
時間がないのに工数かかりそうなものをやるんじゃない。大本の発想元は
nmk氏のE-Hardpop(ボーカルの一番盛り上がるところでけたたましく硬いキックが鳴る曲)で、これをゴアに換骨奪胎して「サビでアシッドベースがめちゃくちゃウニョウニョと曲がる上でボーカルが盛り上がる歌を歌ってたら面白くね?」と思ったことでした。あとDwelled Onの時の「Harder Way to Go」の時から引き続き別ジャンルを足して強引に現代的にする実験。
……まあ、あまりコードを進行させるべきじゃない(のであろう)ジャンルで歌メロひねり出すのって今の自分にはすごく難しくて、なんかただただのっぺりと声が乗ってるだけになってしまったのは大分反省点かも。
歌詞については使ったSV2ライブラリのボイスソースの人が近年クトゥルフ神話TRPGのリプレイ生をよくやってるのをインスピレーション元として、邪神側の心情?思考?ないし衝動?に寄り添いました。
・Tr.03 Purpholos 2026
過去のゴアトランスアルバムDwelled Onでは初めてBeam Standard名義で出した手焼きCD「ゴアナイラーEP」からのリメイク曲が含まれていたのですが、そのとき「Purpholos」は原曲もアレンジ方針も「Kruphix」と被る、ということで早々に対象外になっていました。今回こういう機会なのでそれを拾ってリアレンジ。
Kruphixと被ると書いた通り、原曲は多少早いだけで実にステマニ的なゴアトランスで、アレンジ後も印象自体は大きく変えてはいません。せいぜいメインのアシッドフレーズを刻むタイプから曲げるタイプに変えたくらい?
ただ原曲では一回ブレイク入って二週目の展開をするところで一週目の展開と全く同じフレーズを使いまわしてたのが気に食わなかったので、そこからは別のフレーズを生やしました。
これであのCDの曲でリメイクしてないのは「Undying Fury」だけだけど、アレ1曲だけ元ネタが違うからあんまり自分のところの作品でやりたいって感じではないかも……
・Tr.04 RMS - MARS500 (Beam Standard Remix)
まるで誰かのリミックスみたいな書き方ですが、原曲が自分でリミックスも自分という、音ゲー育ちの人間にはよくある自演リミックスです。
上のほうで書いていた「たまたまゴアっぽくなったからスライドさせた曲」というのがこれで、元々は2021年ごろに書いた「biosphere 2」という曲の続編で、そっちの曲名元ネタのバイオスフィア2というのが宇宙開発を想定した閉鎖環境実験なのでこの曲も同様に閉鎖環境実験の名前を付けました。RMSというのもbiosphere 2で使った名義の名残です。
biosphere 2のリファレンスにした曲がオールドスクールゴアトランスよりさらに古い時代の曲(俗にジャーマントランスと呼ばれるタイプの曲とか、あるいはボディミュージック系とか)なので、スライド前はそちらに合わせてアレンジしていました。スライド後はその経緯を踏まえてあまり新しい音になりすぎないように、という意識をしてたと思います。
あとbiosphere 2を好きと言ってくれたとある方向けに仕込んだセルフオマージュ。
・Tr.05 CLAMBON
タイトルだけ先に決めちゃった曲の片割れ。
ジャンル混ぜて無理やり現代的にする実験の一つで、これはダブステップ系の2つ打ちジャンルを意識してました。
ただ本当にそれぐらいしか考えてたことがないので、一度ある程度展開を進めた後に何すればいいのか全く分からなくなってしまって、かなりギリギリまでどうにかしようとあがきつつ、結局456進行する雑なアウトロ部を作ってしまいました。
余韻もクソもない。