もう2026年も始まってしばらく経ちますが、2025年聴いた音楽作品の10選でも書き残そうかな、と。
KAOMOZIレーベルのレビュー に触発されて音系同人即売会の戦利品レビューをやりはじめたのを一部の方はご存じかと思いますが、
ここ最近「感想を書き残す」ことに強く意味を感じるような気がしてきて。
以下、この記事について。
・上記の序文は「です・ます調」で書いたが、以下の本文は「だ・である調」で書く。自分の場合だと綺麗なです・ます調に揃えるのは結構パワーを使ってしまうのでご容赦いただきたい。
・この記事によって誰かを腐したり何らかの利益を得ようとする意図はないことを強調しておく。
・例によってナイラー個人の感想・見解で、アルミビジョンというサークルとしての公式な意思表示ではない。
・リリースの形態は区別していない。最低でも「WIPでないこと」が明確であればメジャー・インディー・同人、および音楽としての媒体でリリースされているか何かのBGMとしてのみ公開されているかは区別していないし区別するべきでもないと判断した。
(とはいいつつほぼ音源リリースされている曲ばかりになったが、これは偶然である)
・特に調べものをせずに書いているので「作者の意図や実際の時系列」と「筆者認識やこの文章」が食い違う場合がある。その場合は常に前者が正しいと受け取ってほしい。
・たまに筆者とつながりのある人物の記載も出てくるが、あまり忖度はしていない。
・具体的には「筆者が2025年に初めて聴いた曲10選」と思ってほしい。なので去年聴いた曲でかつハマった曲であればたとえ1970年の曲であろうと記載している。
・便宜上1~10の数字は振っているが数字に優劣の意図はない。
・各曲には記載左側から優先で「bandcamp単曲リンク→bandcampアルバムリンク→YouTube動画リンク→物理購入リンク」でリンクを貼っている。
興味があればぜひ購入して聴いて欲しい。
1. Poets of the Fall - War Remedy EntertainmentのシネマティックアドベンチャーゲームALAN WAKEの挿入歌。
同作は海外ドラマのようにエピソード分けがなされており、これはかなり終盤エピソードのエンディングとして流される。
後発作品でメタルバンドOld Gods of Asgardを作曲込みで演じるPoet of the Fallの面々が本名義で手掛けた曲なのだが、
そちらを先に知っている状態でこの曲を聴いたので想像とまったく違う音像でびっくりした。
メランコリックなギターソロで始まり、しばらくその上にゲームの主人公アラン・ウェイクがこれまでたどってきた、そしてこれからたどる道筋を歌い上げている。
まるでアラン本人が自分が救いようのないロクデナシであることを自嘲しているようだが、サビで重苦しいギターとストリングスが入ってくると、
かわってアランの闘う覚悟が見えるようである。得難き妻を取り戻すために果てなき闇との戦争をする覚悟が。
……まあ、こんな強烈な意思のある楽曲で引っ張っておいて、このあと戦争というには逃げ腰な戦いでなんやかんやで突破口を開いてこのゲームは終わるのだが、
その結末は10何年前のゲームとはいえ深刻なネタバレなのでぜひとも自力でたどり着いてご覧いただきたい。
VIDEO 2. みちとせ - せいれーん Vsingerみちとせのアルバム「EmotioRise!」より。
たまたま筆者のM3宣伝ツイートによくふぁぼをなげていただいたので、あいさつがてら購入して、そのなかで気に入った1曲。
ちなみに下に貼った動画リンクはアルバム版のリンクが見つからなかったので初出のFEATコンテスト版。微妙に音の処理とか歌い方が違う。(より海中の歌っぽくてこちらの方が好きかも)
本人の歌声はネオ渋谷系のころの流行りのような、歌と囁きの中間めいた声質なのだが、
アルバム全体はどちらかというとカワボ系のほうが合いそうな楽曲が多く、その中でこの曲は声質というかキャラクターによくあってるなと印象深かった。
ややポストロックっぽい入り方から聴き手を拒否するような歌詞を歌いあげ、サビでテンション自体は確かに上がっているが歌っている内容はさらに厭世的になっている。
船を難破させる怪物セイレーンが乗組員を愛してしまったのだろうか、愛した人を求めつつも遠ざけざるをえない割り切れない感情のように受け取れた。
VIDEO 3. group_inou - STATUS (LOSS VERSION) 近年急に復活したgroup_inouのわりと初期作品。
筆者はもともと解散後のどこかのタイミングでTHERAPYのPVがバズったときにgroup_inouを知ったタイプの人間で、
その時はフルアルバムばかり気にしてこの曲が入っていた再録作品はスルーしていたのだが、
復活に際して改めて過去作を全部ちゃんと聴きなおしたらこの曲が妙に刺さってしまった。
今の時代の今の筆者からすると、この曲の持つ情報量が「ちょうどいい」気がしている。
激しすぎず静かすぎず、細かすぎず粗すぎず、あらゆる要素が適量だけ含まれている。
かといって満足感まで普通というわけではなく、妙な中毒性でずっとリピート再生してしまう。
iTunesを見る限りは去年一番聞いたのはこれだったらしい、そういう不思議な魅力にあふれた曲。
4. RASTER - JOT PIN CUTTER! 北海道は長万部町より、独特なステージングおよびチップチューンと3コードパンクを組み合わせた曲が持ち味のRASTER。
元々コロナ禍ごろに配信ライブのおまけサンプラーでデモCDの製作を告知していて、実際ライブハウスの物販で道内では入手可能だったのだが、
諸事情あって配信のみとはいえ、ようやく道外でも聴けるようになった。
実際に聴く前はサンプラーのほうで鬼リピートしていた「ドランクモンキー」にハマりそうだなと思っていたが、
あまり自分でも理由が理解できていないがこちらがより刺さった。
元々ライブで演奏されていた曲だったそうで(たまたま筆者が聴いて知ったきっかけになった配信ライブでやってなかったのかもしれない)、
基本日本語と英語を意図的にあいまいにしているところに北海道の方言を投入しているのでなにがなんだかわからない。
でも謎に気持ちいい。そういうところが好きなのかもしれないという謎。
5. Yufica - TRIP feat. anoueo リリース時期はFuture系をメインに活動していたYuficaの作品。
筆者がサークル参加した音けっと第8楽章で気になって購入したCDに収録されていた1曲。
CD全体はどちらかというとVoiSonaを主体としたKawaii Future Bass~J Core系統の曲が多かったのだが、
生身ボーカルだしジャンルも上記の範囲ではない、作品内でも独特の立ち位置を感じた。
ロシアンハードベースっぽいにおいが漂うソリッドなベースとリズムの上に、
ボーカルanoueoのカタカナ英語が乗って独特の「ハマる」グルーヴ感を生み出している。
こう書くと暴言のようだが、実際似た性質で流暢な英語が喋れるボーカルに同じことをやらせたとして、ここまでハマる曲にはならないと思う。
この2人だからこそこの曲ができたのであろう、そう認識している。
6. Underworld - Techno Shinkansen Underworldといえばもはやベテランという言葉ですら忍びないくらいのテクノデュオなのだが、
そんなイギリス出身の彼らが「新幹線」という題材で1曲作ってきたのは予想外だった。(筆者がたまたまこの曲を知った前後に水曜どうでしょうを見ていてヨーロッパの優等特急をいくつか知ったから不意打ち的に刺さったのもある。)
車両そのものの高速運転というよりは、新幹線、特に東海道新幹線の快適な輸送をイメージしたかのような、シャープではあるが丁寧に作られた音空間を感じた。
昨今の情勢だと普通の指定席でこれを聴いてもいまいちピンとこないかもしれないが、繁忙期でないときのグリーン車はおおむねこういうイメージの音だし、
コロナ禍前はだいたいこういう感じだった印象がある。
過去に大型フェスで東西をハシゴしたときに使ったイメージだったりするのだろうか、彼らがこのテーマでこういう曲を出してくれたのは結構嬉しかった。
VIDEO 7. Juka_Box feat. 可不 - Lazy Days Archive BMS作家Juka_Boxが評価とか関係なくただBMSを作るイベント「BMSをたくさん作るぜ'25」に投稿したBMS。
近年同人音楽の特にクラブ系ジャンル界隈で、2ステップ/UKガラージのリバイバルが盛んで、
おそらくそれに呼応したのかUKガラージ~スピードガラージのエッセンスを感じるトラックになっている。
もう20年くらい前か、beatmaniaⅡDXでエレピのカラフルなフレーズをちりばめた2ステップがよく収録されていた時があり、
それをスピードガラージとして再解釈しながら現代風にアップデートしたものと言えるのかもしれない。
そんな曲調にあまり寄り添わない歌詞も、「つまらない日々の記録」というタイトルを考えると、
意図的にそうズラしたように感じている。
VIDEO 8. Shiiori - わたしが九夏を縒う迄 VRchatをメインに活動しているShiioriの、ボタニカメインのEPからの1曲。
2025年初頭にどうしてもボタニカが聴きたくなった時があり、bandcampを漁って見つけたもの。
この曲自体はボタニカというよりジャンルとしての「ヒーリングミュージック」に近い部分があるが、
ピアノフレーズが作る時間の動きに沿って、シンセストリングスと鳥の鳴き声が包むように鳴っていて、
近年の「情報量を聴く音楽」の間にこれを1曲挟むだけでなんとなく救われたような気がした。
こういうのも音楽の一側面なのだから意識して聴くようにしないといけないな……と思った反面、
そう意識しちゃうと意味がないのでは?というジレンマ。難しい話だ。
9. AQUA PROJECT - Deep Inside 一昨年10何年ぶりに復活したStepManiaパッケージparty nite mixの新作「party nite mix【2nd Re:VISION】」では、
主催UltraEcho以外の旧作製作メンバーも曲を書き下ろし始めたのだが、その中で特に刺さったのがこの1曲。
筆者的にはよく借用させていただいている創作ジャンル「エレメンタル」のオリジネイター、という認識の、
メンバーAQUA PROJECTによるハードグルーヴの1曲。
ハードグルーヴというジャンルは昔から存在しつつもムーブメントなのかジャンルなのかわかりづらいニッチなところにあったのだが、
それを音ゲー尺に縮めながら再解釈しつつ、氏の作家性あふれるリフでまとめ上げている。
4thMix以降の5鍵ビートマニアの香りを感じる独特な和音遣いも注目ポイント。
これがDTMに復帰してかなり早い時期の作品だというからたまらない。
復帰した氏が全力でアクセルを踏むと何が生まれるのか。今後が楽しみだ。
(視聴リンクなし)
10. Original Love - 夜をぶっとばせ 2018年頃から所謂「渋谷系」にカテゴライズされている曲を逆走的に漁っているのだが、ようやく田島貴男にたどり着いた。
これは本人がその呼ばれ方を嫌っていた時期の曲だが、むしろピチカート・ファイヴ在籍時に初リリースされたので現代の我々はあんまり気にして使い分ける物でもないのかもしれない。
で、ここではOriginal Love再開後のバージョンを取り上げている。
全体的なイメージはピチカート・ファイヴ版と大きくは変わらないが、ライヴ志向のOriginal Loveだけあって、
スタジオ音源だとしても容赦ない荒々しさ、ボディミュージック感が感じられる。
後にfree soulで取り上げられるくらいにはソウルやファンクなどのブラックミュージックを志向していた節があって、
そういった姿勢の違いからくる細かい出音の違いに気づけるのが楽しかった。
VIDEO 10曲ピックアップしてまとめて振り返ると、「メジャーなJ-POPとのかかわりが完全に絶たれた1年だった」ことは反省すべき点なのかもしれない。
元来のサブスク嫌いに加え、現住所ではCDショップへのアクセスが困難で近畿圏時代のような探し方・買い方ができなくなった、という言い訳はできるが、
それはそれとして、仕事でないとはいえ一応は音楽作ってる人間なのであんまり過去の名曲に閉じこもったり自分だけ知っている名曲を掘り当てるのに執心したりしてるのは、
ちょっと……危ないなあと感じた。
一方で聴きたい音楽を探したいときの諸々のサービスの使い方は上手くなったのかもしれない。
bandcampなんかだとキュレーターというより「特定のジャンルをすごくいっぱい買ってる一般ユーザー」みたいな人のコレクションを見ればアタリの宝庫だったりするし、
YouTubeも能動的な検索こそ未だ改善される見込みはないが、洋楽なんかだと1曲引き当てれば関連して似た傾向の曲を連続して提案してくれるし、
そこでは割と再生数が信じるか否かの指標としてうまく機能しているように感じた。
これでも本当に隠れてしまっている名曲は隠れてしまうが、ガイドとしては合格点だろう。
2026年もそろそろ始まって1か月経とうとしているが、今年はどのような楽曲に出会えるのだろうか。